2_wEi解体真書 ~まとめ編~

 前置き

 結局、前の記事に2_wEiについて自分がどう思っているのかを最後にまとめたものまでをも組み込んだらさすがにとんでもない分量になってしまうので非常に躊躇われました。
 なので、今回それを分離して独立した一つの新たなものとして別に投稿することにし、ついでに玄人向けもはなはだしかった前のものよりも(若干ですが)簡潔に要点をまとめることで、まだ2_wEiを知らない層にも何かしら興味を持ってもらえるような感じにしていきたいと思っています。
 ……いけるだろうか……。
 まあとにかくやってみるしかありませんし、いつものようにこんな前置きもまた長々書いていたらまさしく本末転倒ですので、以下からスピーディーに文章を進行させていきたいと思います。

 

本編

 さて、正直ありえないくらいの分量でようやく考察し終えることの出来た2_wEiのここまでのストーリーですが、結局のところそんな物語の最も興味深くて魅力的な部分とは具体的にどういうものなのでしょうか。
 単純にストーリーそれ自体のクオリティが高く、面白い。
 それは言うまでもなく当たり前ですし、今のこの二次元アイドル系アプリゲーム戦国時代には割とありふれたことでもあると思われます。
 そんな中で、他のシナリオのレベルが高いと評されるそれらと比べて2_wEiのストーリーは何が違い、どんなことを特徴ないしは長所として考えることが出来るのでしょうか。
 様々ある中で、個人的に大きなものとしてはまず『従来のアイドルものではあり得なかった悪逆を描くことが出来る』という部分を挙げられるのではないかと考えています。
 それが一体どういうことなのか、ちょっとだけ細かく説明していきましょう。
 これまでの二次元アイドルもののキャラクターやストーリーは様々な味付けのバリエーションはあれど、その根底にはいかなる人物やユニットであれアイドルである以上は愛と夢と希望とを賛美し、道徳的に正しい言動を行う存在でなければならないという不文律が存在していました。
 そもそも人に仇なすような悪の意志を主張する目的で万人に好まれる商売であるアイドルになるというのもおかしな話なので当たり前と言えば当たり前なのですが、とにかくそれが主人公であろうと、あるいはそれと敵対するライバルであろうとも、物語において目指す場所は同じであり、その主義主張が上記のような正しさと美しさから外れることはありませんでした。
 それに対して2_wEiは大本の作品の設定自体がかなり特殊なことも手伝ってか、それらの外れてはいけないキラキラした不文律から思いっきり外れるどころか逆走してみせるかのようなキャラクターの言動や物語の形成を見事に成功させてみせました。
 やはり、それこそが非常に独特かつ他と一線を画す2_wEiという物語や楽曲を含めた総合的なコンテンツとしての面白さと言えるのではないでしょうか。
 これまでの二次元アイドルものではどこにもなかったような、絶望と憎しみに翻弄されて悪に堕ち、あるいは道を見失い過酷かつ暗澹とした運命に苦しめられる姉妹の物語は全ての硬直化したお約束を打破し、もはや掟破りとも言える展開に満ちており非常に衝撃的に感じられます。
 また、そんな物語を彩り、補完するようなストーリー性を持った2_wEiの楽曲群も同様に、従来的な夢や希望を否定し、絶望や憎しみ、敵意に満ちたメロディーや言葉で形作られており、今までになかった新しさと独創性、そしてそれ故のオンリーワンな面白さに満ち溢れています。
 ひとまずのところは、そんなアンチヒロイズム*1と表してもいいような過激かつ主流への反抗的なユニットの世界観が大きな魅力の一つであるということは間違いのないかと思われます。


 しかし、仮にそれがそういうアイドルもののキラキラとした既成概念を単純に反転させただけの代物であるならば、単に安っぽくて趣味が悪いだけの逆張りでしかないでしょう。
 王道を否定して、それと反対の道を行くだけならば誰にでも思いつくことではあります。
 それに、悪役とはやはりどこまでも悪役でしかありません。
 その姿勢が万人に受け入れられ、もてはやされるものであるとは考え難く、いずれは正義である主人公(ヒーロー)に物語でも現実においても打ち倒される運命からは逃れられないでしょう。
 2_wEiの場合、その辺りの問題はどうなっているのでしょうか。
 上に書いてきたようにお約束や規則のようなものからはみ出した表現が出来ることは確かに2_wEiの強さではありますが、単にそれだけのことでしかないのであれば自分もわざわざこうして特筆すべきような秀逸さをそこに見出すことは出来なかったでしょう。
 もしもその問題点がそのままであれば、物語上打ち倒されるしかない悪役のコンテンツ展開が多少どこよりも拡大されただけに過ぎないものでしかありません。
 では、果たして2_wEiもそうなのかと考えてみると、それも違う、そうではないということを個人的な意見ではありますが断言してしまってもいいように思います。
 そして、それこそが2_wEiの物語、楽曲、ひいてはコンテンツそのもののもう一つの大きく魅力的な部分となっているのです。
 そんな、アイドルものの中でも他に類を見ない悪役として過激な表現が出来ること以外の2_wEiの魅力、面白さ、それは『2_wEiの心情や立場が物語の進行や時間の経過と共に絶えず変化をしていく』というところにあると言えるのではないでしょうか。
 それは一体どういうことなのか。これも少しだけ詳しく説明してみましょう。
 確かに2_wEiは最初にガチガチの悪役としてコンテンツの中に登場してきました。そして、アイドルものとしての正しい観念に真っ向から反逆するようなその言動は刺激的な魅力を持っていました。
 しかし、2_wEiの物語が進行していくにつれて、次第に何故彼女達がそんな悪に傾倒するようになったのか、キラキラとした希望ではなく薄汚れた絶望を歌っているのか、その理由が明らかになり始めます。
 その物語の全貌は実際にストーリーを読むか、あるいはそれを考察した前の記事を読むことで知ってもらうとして、いずれにせよ肝心なことは制作側が2_wEiを単なる過激な言動だけがウリの安っぽい悪役として終わらせる気がなかったということにあります。
 彼女達にしっかりとしたバックボーンを用意し、緻密に構成されたストーリーを丁寧に時間をおいて慣らすように公開していくことで、2_wEiは徐々に憎むべき悪役から、同情の余地を持ち何かしらの共感も抱けるようなニュートラルな立場の少女達へと変貌していきました。
 そして現在では、遂に2_wEiは悪役であることを完全に脱却し、もう一方の主人公、ヒーローへとなりつつある……というよりもうなったと言ってしまってもいいでしょう。
 そのように、既成概念や観念の単なる否定と逆行だけで終わらずに、そういったものを内包しつつも最終的に否定していた最初のそれへとたどり着くという、悪役ではないがかと言って清廉潔白な英雄とも言い難い複雑なキャラクター性と、それを生み出すために緻密に組まれた物語の構造もまた2_wEiというコンテンツの大きな魅力であり、面白さなのです。
 その上更に秀逸なところとして、そのキャラクターとしての立ち位置や物語の悪から善への変遷において、違和感や強引さのようなものを感じさせないための時間と手間を惜しまない丁寧さがそこに加えられているというものがあります。
 悪役が正義の側へ心情や立場を変えるというのは、実際その悪としての時期が際立っていて魅力的ですらあるほど、デリケートかつ難易度の高いシナリオ運びの手際が要求されるものでしょう。
 「2_wEiもかつては悪役でしたが、今は心を入れ替えて正義の味方になっています」と、言葉にしてみれば簡単で、安易さすら感じられるかもしれません。
 もしもその手際が安っぽく適当なものであったならば、2_wEiの物語は先に挙げたような悪役としての魅力もまるごと失った茶番に成り下がっていた可能性も大きかったと思います。
 しかし、実際のところ2_wEiにおいてそのシフトチェンジは恐ろしいほどの巧妙さと見事さでもって達成されたと個人的には感じられました。
 そして、その手腕自体も確かに素晴らしいものでした。
 けれどそれ以上に、それを駆使して丁寧かつ繊細に描かれた、希望や輝きを頑なに否定し絶望と憎しみに取り憑かれていた2_wEiが、時間をかけて過酷な運命に抗い乗り越えていこうとすることで否定していたはずの希望や輝きを手に入れ、それを歌い始めるという物語。
 それ自体にも非常に胸を打つ感動と、誰かに勧めたくなるような魅力や面白さが存在しているように思います。
 ということで、斬新かつ過激な悪役というだけでは終わらず、そこから王道の希望と輝きを歌う正しい英雄(アイドル)へと変化していくことと、その変化を描く物語の巧みさというのも、2_wEiのストーリーの大きな魅力かつ長所であると言えるのではないでしょうか。


 とはいえ、そうなるとここでその二つの特色の間に矛盾が生じてしまうことになるのではないかと思われるでしょう。
 悪役という立ち位置であるからこそ可能な主流に縛られない反抗的な言動と世界観が魅力の一つであるのに対して、最終的に2_wEiは悪役を脱して一度外れたはずのオーソドックスなアイドルとしての観念へ立ち戻ってくるのも魅力であると言われると、一体どっちが真実なのやらわかったものではないかもしれません。
 しかし、今のところ2_wEiというコンテンツにおいて、この両者はある程度矛盾することなく併存出来ているように個人的には考えられます。
 それについてもまた少し詳しく説明していきましょう。
 確かに、現状の2_wEiの立ち位置は紛れもなくヒーローのそれであると言っていいでしょう。
 悪役であった頃の過激で反抗的な言動や表現というのが現在ある程度鳴りを潜めてしまっているのも間違いはないことかもしれません。
 過去の2_wEiにあった破滅的で退廃的な、薄暗い雰囲気の方が好みだったという人も少なからず存在しているかもしれません。
 しかし、そうして立ち位置が変わったからといって、以前までのそれら全部が全部失われてしまったというわけでもありません。
 まずヒーローとなったからといって、2_wEiの言動までもが完全にアイドル的理想像に迎合したお行儀のいいものになったわけではありません。
 愛や希望を歌うために、綺麗な言葉だけを選んで使うようになったということもないでしょう。
 今の2_wEiはそんな風に、最初期の頃からのアイドルものとしての既成概念に縛られない過激かつ自由な表現方法を維持しながらも、それを用いることでアイドル的な観念を体現していくという言うなればハイブリッドな形式の、これまたどこにも類を見ない新しいタイプの面白さを獲得しているのです。
 というよりは、そんな先に挙げた二つを融合させたこのスタイルこそが2_wEiの真の魅力にして特色であり、強さであるのだと言ってしまってもいいかもしれません。
 結局、前の二つはこの結論に持ってくるための前置きだったのです……とはいえ、その二つもそれぞれがコンテンツの一時期においては魅力的な部分であったことも間違いはないでしょう。
 どの時期のどれに一番心惹かれるかは人それぞれでもあると思われます。
 いずれにせよ、2_wEiのストーリーの魅力と面白さを感じられる部分は、物語の中の二人の立ち位置のように絶えず変化を続けてきたと言えるでしょう。
 どんな時期の2_wEiにもそれぞれの良さや面白さがあるということは前の記事で長々とまとめた通りですが、結局物語としての内容もそれと同じことであり、その絶え間ない変化から生まれる新しさこそが全ての根底に存在している魅力であるのかもしれません。


 そして忘れてはならない、今まで挙げてきたものに勝るとも劣らない2_wEiの物語を後押しする強さについても少しだけ触れておきましょう。
 今更自分がここで言うまでもないことかもしれませんが、何よりも2_wEiは楽曲のクオリティーが恐ろしく高い。
 それもまた2_wEiの大きな魅力の一つ……当たり前ですし、身も蓋もない話でもあります。
 そうは言っても、上に書いてきたようなストーリーの魅力的な要素の全ても、その表現方法を支えて、手助けする楽曲自体の出来の良さがなければ成り立たないものであります。
 いくら物語自体が斬新かつ良質なものであったとしても、それに付随する楽曲がヘニョヘニョであったならその魅力も半減してしまうことでしょう。
 その点で2_wEiの楽曲は物語が要求する水準を見事に超えているし、何だったら楽曲自体の素晴らしさが物語の方を実際の実力以上に押し上げている部分すらあると言ってもいいかもしれません。
 そしてまた逆に、魅力的な物語の方も、楽曲に元々備わっている強さを更に引き上げているところもあるでしょう。
 物語と楽曲。楽曲と物語。
 ヒットしているアイドルものにおいては必ず存在していると言ってもいい、互いが互いを高め合うという理想的な関係がきっちりと築けていることもまた、忘れずにここに明記しておかなければならない2_wEiのストーリーの魅力だと思います。
 特に全ての楽曲の歌詞において物語を補完するような役割を持たせている2_wEiにおいて、その関係性は他よりも更に密なものであると言えるのではないでしょうか。


 さて、色々と書き連ねてきましたが、2_wEiの物語、あるいは楽曲なども合わせた総合的なコンテンツとしての魅力や面白さというのは概ねそのようなものであると言えるように思います。
 ここで一旦簡潔な形にしてそれらを並べてみましょう。

・他のアイドルものに類を見ない悪役としての常道から外れた表現方法
・単なる悪役というだけではなく、そこから変化し、成長していくことでもう一人の主人公となるような緻密に練られた設定と物語
・その二つの長所を組み合わせた、テンプレートから逸脱したアプローチを取りつつも王道的な観念を表現出来る今現在のスタイル
・それらを下から支える良質な楽曲群、それと物語とで生み出される互いを高め合うようなシナジー

 個人的に2_wEiのストーリーとコンテンツ自体について、その魅力であり興味深い要因として捉えているものは要点だけを抜き出すとこんな感じになるかと思います。
 ……こう書くと、それら一つ一つの細かい部分については上で長ったらしく説明してきた通りでありますし、話はここで終わってしまいます。
 いや、正直終わってしまっても何の問題もないのですが、これらの要因全ての根底に共通しているもの、2_wEiの核とも言える要素をここから更に抜き出してみることでもっと簡潔に全部をまとめられる気がするので、それについてもう少しだけ書かせてください。


 さて、では上に挙げた2_wEiの魅力であり強さと言える要素達、それら全てに共通しており、その根底に存在しているものとは一体何なのでしょうか。
 結論から言ってしまうと、個人的にはそれは『格好良さ』である、と表現出来るのではないかと考えています。
 2_wEiの『格好良さ』。それは一体どういうものなのでしょうか。
 もう少し詳しく考えてみましょう。
 たとえば最初に2_wEiの魅力として挙げた悪役としての過激な言動や表現ですが、これらは一歩間違えれば真っ当に受け取られることはなく、ネタ扱いされてもおかしくない危険性を持ったものでもあったと思います。
 そもそもの土台となる世界観がふんわりしている大体のアイドルものにおいて、バトル系少年漫画のような悪役をライバルのアイドルユニットとして登場させたとて、それが大真面目な展開であるとは考えにくいように思われます。
 恐らくそのままではその存在は完全に浮いてしまうでしょうし、世界観から浮いて乖離しすぎたそれはギャグとして消費されてしまう可能性が高いでしょう。
 そして、もちろん2_wEiにも大いにその危険性がありました。
 2_wEiが登場する大元の作品である「8 beat Story♪」は、2_wEiを実装する前から既にアイドルものとしてはどこか毛色の違うシリアスな世界観を築き上げつつはありましたが、そうは言ってもこれほどがっつり悪役として主人公と対峙する存在が出てきてもそれを真面目に受け入れられるのかは未知数でありました。
 だが、結果としてその導入は非常に上手く達成されたように思います。
 何故なのでしょうか?
 それは、制作側が徹底的に2_wEiというキャラクターを格好良い存在として描いたからではないだろうかと自分は考えています。
 彼女達の歌う絶望や憎しみ、そして過激で退廃的な言動が単なる演技的なパフォーマンスではなく、きっちりとそうなるべく背景があるものとして納得して真剣に受け入れてもらえるように、徹底的かつ綿密に二人の設定と物語とを作成してきた。
 一切の妥協を許さず、手を緩めず、ギャグ的な要素の介在する余地すらないものとして、2_wEiのハードでシリアスな世界観は形成されています。
 そして、そうするためにも2_wEiは敢えて誰の目にもまず格好良いものとして映るように出来ているのではないかと、個人的には感じられるのです。
 当たり前ですがアイドルとは、基本的に可愛いものとして描かれています。
 ビジュアルだけではありません。言動も、楽曲も、どこかに必ず愛らしい印象を感じさせるものが組み込まれています。
 だが可愛さは甘さを生み、どうしても雰囲気を弛緩させてしまう。
 なので2_wEiは出来る限りそれらを取り払い、ハードな雰囲気を失わせないために、格好良さが最初にして最大の印象として残るようにされているのではないでしょうか。
 無論、中には格好良さを前面に押し出したクール系のアイドルやユニットというのも他のコンテンツにおいても存在しています。
 しかし、それでも尚どこかに親しみを感じさせるための隙のようなものが設定されているものと思います。
 ですが2_wEiの場合は、その親しみを与える余地すら邪魔になるものとして排除されているかのようです。
 格好良さの方向性も、ボーイッシュであったり、王子様系のキャラクターが醸し出すようなものではない、もっと根源的な、ビジュアルや言動に左右されない格好良さとなっています。
 アイドルものの作品世界でシリアスな悪役として振る舞っても違和感を覚えさせない、可愛らしさや親しみを生むような隙も徹底的に排除した、世界観から浮いた存在とならないために必要な説得力と雰囲気を生む格好良さ。
 それこそが、2_wEiをその立ち振る舞いや表現が魅力的な悪役として成立させている最大の要因なのではないでしょうか。


 さて、2_wEiの悪役として常道を外れられる魅力を成り立たせるには、彼女達に『格好良さ』を感じさせる印象を見る側へ与えることが不可欠であるということは理解してもらえたでしょうか。
 もちろん、これはある種強引かつどこまでも個人的な仮説に過ぎないところであります。
 2_wEiに対して可愛さや親しみを感じている人達ももちろんいるでしょうし、それを感じさせることが目的の演出や展開などが全く存在していないというわけでもありません。
 しかし、2_wEiを単なるイロモノ扱いで終わらせず、本気で彼女達の悪役としての魅力を引き出すためには、やはりシリアスな雰囲気をこそメインとしなくてはならないだろうし、シリアスさとはそのまま格好良さへと繋がっているものであるとも考えてしまってもいいでしょう。
 そして、その格好良さは何も悪役としての2_wEiの魅力を成り立たせるためだけに必要というわけではありません。
 悪役から変化と成長を経てヒーローへと到達する2_wEiの物語。それをより感動的に描くためにも、その激動の運命を真剣に見守ってもらうためにも、彼女達がどれだけその立ち位置が変化しようとも格好良く映り続けるという印象を崩してはならないのではないかと思います。
 どこかでストーリーを茶化せるような隙を見せてしまえば、絶望と憎しみに囚われ闇に堕ちながらも運命に抗い這い上がろうとする2_wEiの姿に心から感動し、共感してもらうことは難しくなるでしょう。
物語のハードさとシリアスさを維持し続けるためには、やはりどんな段階にあっても2_wEiには『格好良さ』が必要なのです。
 そして、今現在のように悪役を脱してヒーローとなった2_wEiにも、その魅力の一端が悪役の時のようなルールを無視した表現方法を取れるという部分にも存在している以上、同じ理由で格好良さを感じ続けていてもらわねばならないでしょう。
 更にそれらの推察を補強するかのように、2_wEiの楽曲もまた全てが例外なく激しいリズムと音による甘さのない曲調であり、二人の心情をシリアスに描いた歌詞を持ったものだけで統一されています。
 アイドルものにおいてバリエーションの一つとしてひたすらクールで時には苛烈な雰囲気の歌詞と曲調の楽曲が数曲存在していること自体は別に珍しくもありません。
 しかし、20曲近い楽曲の全てが徹底してそのような性質のものだけで構成されているようなユニットは殆ど唯一無二とすら言ってしまってもいいかもしれません。
 それも全て、2_wEiの『格好良さ』というイメージを崩さないためであり、かつそれを楽曲方面からもより強く感じさせるためであるとするならば納得のいく話ではないでしょうか。
 そしてそんな徹底ぶりは、物語や楽曲の面だけに留まりません。
 2_wEiの現実でのライブにおいても、担当声優がステージの上でもキャラクターを演じたままパフォーマンスの全てを行うというところに、その異様なほどの拘りの一端を見ることが出来るように思います。
 いくら物語と楽曲をシリアスな雰囲気で統一させても、ライブイベントが従来のような担当声優がそのまま個人としての立ち振る舞いで出てきて歌うだけの緩いものではそれを崩しかねないと判断したところもあるのではないでしょうか。
 そのように現実でのライブイベントですら2_wEiの世界観を壊すようなことは許さず、キャラクター自身がステージに立つ物語の延長線上とすることで、むしろその『格好良さ』の底上げにも繋げている節すら見受けられます。
 いずれにせよ、このように2_wEiはまさしく徹頭徹尾、ユニットのイメージが『格好いい』ものとして見る側の人々には映るようにコンテンツが作られていることは間違いがないと言ってしまってもいいのではないでしょうか。


 さて、先に挙げてきた2_wEiの魅力や面白さであるとしたもの、その全てに共通して根底に『格好良さ』という要素がなければ成り立たないものかもしれないというのは理解してもらえたかと思います。
 そして、2_wEiの楽曲やライブイベントも、そんな『格好良さ』を生み出すための装置としても機能しているのかもしれないということについても。
 だとするならば、結局2_wEiというユニット、その物語、そしてコンテンツそのものの最大の魅力にして強さにして面白さというものは、つまり2_wEiの『格好良さ』であると言ってしまってもいいのかもしれません。
 2_wEiの最大の良さとは、2_wEiの全てがメチャクチャ格好いいことである。
 そう定義してみれば、今まで長ったらしく分析してきた様々なことが実に簡単に説明出来てしまいます。
 2_wEiの悪役的であったり、反抗的で過激な言動や表現は、全部が我々に彼女達を非常に格好いいユニットとして映してくれています。
 降りかかる絶望や過酷な運命を乗り越えて希望を掴もうとするヒーローとなっていく物語は、2_wEiの一番格好いい姿を我々に届けてくれています。
 現在の、常道のアイドルとは違った斬新な形ではありながらも、普遍的な希望と勇気を歌って誰かの力になろうとする在り方は、もはや言うまでもないヒロイックさに溢れていて格好いいの一語に尽きるでしょう。
 根底に『格好良さ』があるからこそ先に挙げてきたそれらの要素が魅力として成り立つのと同様に、それらから新たに生み出される『格好良さ』が更に2_wEiの元々の『格好良さ』を押し上げるというサイクルになっている。
 楽曲も、ライブにおけるパフォーマンスも、全部が全部、一分の隙もなく格好いい。
 つまり、2_wEiは格好いいのです。ただひたすらにこのコンテンツは格好いい。
 だから、そんな今までにない、真剣な格好良さに溢れたアイドルというものに興味があるならば、是非とも2_wEiを見て欲しい。
 ……と、まだ2_wEiを知らない誰かに拡めていこうとするならば、そんな宣伝文句こそが一番簡潔にしてなおかつ全ての魅力的な要素をカバー出来ている言葉なのかもしれません。
 実際、今これだけ二次元アイドルコンテンツが溢れている中で、ここまで格好良さ極振りのスタイルでやっているユニットは極めて稀であるし、もはや特殊と言ってしまってもいいように思います。
 自分もそれなりに様々な二次元アイドルを応援し、ライブ等にも足を運びましたが、作品の中の数ある演出バリエーションの一環としてであったり、人間的なものとしての格好良さを感じたことはあれど、基本的にアイドルとは可愛い、愛らしい、だからキラキラしていると感じたからこそ追いかけてきました。
 しかし、2_wEiの場合はもはや現在、あまりの格好良さに心を惹かれて追いかけるようになってしまっているのです。
 そして、そう感じて魅了されてしまうその感覚にも心当たりがあります。
 それは、男性アイドルやアーティストに感じるそれと非常に近しいものがあるように思うのです。
 つまりそういった格好良さでアイドル的な人気を築く手法も元からあるにはあるのですが、それを女性、しかも二次元美少女で大真面目にやろうとしているのはまさしく2_wEiくらいのものなのではないでしょうか。
 もはや斬新を通り越して狂気に足を踏み入れているような発想ですが、現在その試みは実際かなりのクオリティーで達成出来てしまっているように思えます。
 それもこれも、楽曲の方向性の完全な統一、ライブイベントでのパフォーマンスすらキャラクターそのものとして行うなどの絶対にその印象を崩させないようにするイメージ戦略、格好良さを第一に感じてもらえるような設定や物語の形成等の、綿密かつ徹底したプロデュースによって漕ぎ着けた成功であると言えるでしょう。
 そうして生み出された2_wEiの『格好良さ』がまた、そんな『格好良さ』を生み出すための施策のそれぞれをコンテンツにおける魅力的で面白い部分として成り立たせ、引き上げている。
 まさに『格好良さ』が生み出す無限サイクル、それこそが2_wEiというコンテンツの最も優れていて、魅力の根幹を支えているシステムなのではないかと個人的には推察する次第であります。


 結局いつものように無駄に長くなった上に一体何が言いたいのかもよくわからなくなってきたように思えるので、もうここら辺で強引に締めたいと思います。
 つまり、2_wEiは格好いい!
 キャラクターも、楽曲も、ストーリーも、全部が格好いい。
 だからこそ面白くて、魅力的であり、興味を惹かれる部分がその中に数多く存在している。
 知らない人に一番お勧め出来るところも、つまりはそこなのです。
 2_wEiの本気の格好良さがコンテンツの魅力と面白さを生み出し、またその魅力的で面白い部分こそが2_wEiの格好良さを生み出している。
 そういった『格好良さ』を生み出すための徹底した施策の部分こそが、2_wEiというコンテンツの根本の面白さなのです。
 と、まあ、そういうことが言いたかったんだと思います。上手い着地点が見えなくて自信なくなってきたな……。
 まあ、なので、2_wEiはこれからも絶えずその立ち位置や面白いと感じる部分、手法などが変化をし続けていくコンテンツであると思われます。
 これまでと同様に、様々な実験的な試みや挑戦をこの先も実行していくのでしょう。
 しかし、恐らくそれも全て2_wEiの『格好良さ』を高めていくためであるという根本の目的だけは変わることはないと思われます。
 故に、どんなにその在り様が変化していったとしても、2_wEiを格好良く見せて、コンテンツを魅力的にするためであると思えば不安はないし、これから先の全てが楽しみになってきます。
 次の2ndファイナル以降で、2_wEiがどのようになっていくのか。
 これからも予想を超えて、期待を裏切らない展開が待っていることを信じたいです。
 そして、そこでまた新しい感動に出会えたとしたら、改めてそれも加えて2_wEiについての考察を深めていこう……とは、個人的にはもうしたくないです。
 いや、本当に、2_wEiのストーリー考察するのこんなメチャクチャに量も文章考える時間も長くなって精魂尽き果てるとは思わなかったですし、そこまでしてもまだストーリーに散りばめられた全ての要素を拾って考え尽くせた気がしないもの……。
 だから、2_wEiについてはもう書きません! 僕は!
 なので、ここから先の2_wEiについての考察は、もし今回のこの考察を読まれたことで改めて2_wEiについて自分も考えてみようと思ったり、あるいは新しく2_wEiについて興味を持って追いかけてみようと思った誰かがいるのならば、その人達にお任せしようと思います。
 そう、つまりはそういう人達が現れてくれることを願って、自分は今回のこの馬鹿みたいに膨大な考察を書いてきたのです。
 そういうことにしておけば何とも綺麗に文章が締まる気がしますので、とにかくそういうことにしておきます。
 そして最後に、今この記事だけを読んでくださった方だけではなく、もしもこの前の記事であるストーリー考察からここまで全部を読んでくださった方がいるとするならば、その行為と根気にここで改めて感謝を述べさせてください。
 本当にお疲れ様です……。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

*1:アイドルとしての汎的な形式を表すならアイドリズムと書くべきかもしれないが別の何かを思い出すのでやめておきたい