これまでとこれからのエビストについて -三周年イベントの感想ついでに色々考えた話-

 

まあ今回はそんな話です

 正直、そろそろエビストに関する長文お気持ち部の活動は引退しようと思っていたんですけども(今更書くようなこともないほどコンテンツは立派に成長したので)。
 まあまあ、前回の4thライブについて書いた時点でそう思っていたんですけども、それから一年、エビストというコンテンツには色々なことがあって……本当に色々なことがあって、8 beat Story♪は新しい体制で、8/pLanet!!はこれまでと違う新しいメンバーで、今一度新しいスタートを切らざるを得なくなってしまいました。
 そして、そのお披露目的な催しがちょうど先月に3rd Anniversary Special Event――三周年記念イベントという形で行われ、自分もそれに実際参加して、新しいエビスト、これからのエビストというものをこの目で見てきました。
 そうして見てきた上で、改めてこのコンテンツについて思うこと、考えさせられたことがたくさん出来てしまいました。まあ、恐らくいい意味で。
 なので、結果そんなことになってしまったこの一年の色々に対する自分の気持ちの整理を一度つけておく上でも、またそんな門出を前にこれまでのエビストを今一度振り返ってみるためにも、そしてこれからのエビストの始まりを見て自分が思ったことをまとめるためにも、もう一度くらいお気持ち長文を書き残しておこうかなと思い、今これを書いている次第です。
 それにまあ、何より三周年ですから! 基本的にはおめでたいことですから!
 そのお祝いも兼ねてと言いますか、エビストと出会ってから今までどうせ自分に出来たことなんてこうやってアホみたいに長いお気持ちをしたためて物好きな人達に届いてくれと願いながらネットの海に流すことくらいですし。
 まあそんなわけで、単なるクソポエムになりすぎないように気をつけつつも、自分の目で見てきた8 beat Story♪のこれまでの軌跡と、そして新たに見たこれからの出発とを、イベントの感想と絡ませつつ言葉にしていけたらなぁと思いますので、以下からまた長々と*1ではありますが、もしも読んでくれる人がいるのならば、お付き合いいただけたら幸いでございます。

 

 


 さて、4thから色々なことがあり、同じコンテンツ内では2_wEiという新しい形のライブへの試みも行われている今、それに比した8/pLanet!!の独自性と強さ、そして今後取っていく進路というものを考えてみる上で此度の三周年イベントは結果的にはいい指標となれていたように思います。
 トークバラエティー、朗読劇、ライブ――今回行われたイベントはその三つを全部詰め込んだものでした。
 そしてそれらはやはりそれぞれが今のエビストとハニプラの強い部分、特色、あるいはコンテンツとしてのセールスポイントであり、そのことを今回、そんな全部乗せを一気に見させられたことで再確認というか、再定義出来たようなところがあったと感じました。
 この三周年イベント、一見すると何も考えずにやりたいことを取り敢えず全部ぶち込んでみたような豪快過ぎる内容に思えるかもしれませんが――いや実際本当に深く考えずにそうなった可能性も否定しきれないところはあるんですが……しかしまあ、現状のコンテンツにおいて見せたい部分、ハッキリ強さと言えるもの――キャスト、キャラクター、ストーリー、楽曲、それら全てを一斉に知ってもらう、その良さを感じてもらう場合において非常に効果的な構成になっていたのではないかなと思います。
 特に今回は新メンバー加入から初めてのユニット全員参加イベントであり、そんな新メンバーお披露目の場でもあるという関係上、ご新規さんも結構多く来られていたことでしょう。
 あるいはこの次の何らかの展開に繋げられる力を持ったスポンサーが、試金石として見に来ているような可能性も否定しきれません。

 なので、まずそういった層に向けて8 beat Story♪というコンテンツは一体どんなものなのかというプレゼンテーション的な役割をイベントが果たさなければならなかったところがあったのだろうとも考えられます。
 そして、実の所それはそういった新規層ばかりのためではなく、むしろこれまで追いかけてきた既存のファン達にとっても同様にそうでなくてはならなかったのではないでしょうか。
 4thライブから丸々一年間、コンテンツは随分と実験的な動きを続けてきたわけですが、果たしてそこから一体どういうものが得られて、どう今後の動きに活かされるものなのか。
 また、その一方で得るものばかりだった一年というわけではなく、むしろ大きなものを失ってしまった一年でもあり、その喪失を経てなお今後どうしていくのか。
 初期メンバーから二人が抜けてもまだコンテンツとユニットを続けるという選択をしたけれども、本当に新体制としてやっていけるのか、旧体制と比べても納得のいくものを出すことが出来るのか。
 三年も続けてはきたが、正直未だ安泰とはいえないコンテンツの人気や勢いという現実の中で、この先どんなことをしていくつもりで、どんな場所を目指しているのか。
 それらのことを一番知りたかったのは、他ならぬ既存のファン層であったことは間違いないでしょう。
 だからこそ、今回のイベントは三周年の記念と銘打ってはおりつつも、これまでの積み重ねを振り返るというよりもむしろそれを踏まえた上でのこれからの未来の展望を示すことこそが求められているイベントであったと思います。
 そして、その点に於いて今回のトークバラエティーパート、朗読劇パート、ライブパートという三本の柱で構成されたイベントの形は見事に、納得のいく今後のビジョンを提示してくれたように個人的には感じ取ることが出来ました。
 エビストというコンテンツの現在、その一体何が同ジャンルの他作品と比べての特色であり強さであるのか。
 そしてコンテンツの未来、今後どういう方向性でこの作品を進めていくつもりなのか。
 その辺りについての運営側の回答を今回のイベント、そしてそれを構成するそれぞれ三つのパートから、個人的感覚かつ何となくという曖昧さではありますが、受け取ることは出来たように思います。
 まあ、三周年イベントはそんなイベントでしたよ。という。
 結局イベントの感想として言いたいことというか、結論はそれで全てではありますが、以下からはそんなイベントを構成していた三つのパートそれぞれを見たことで今回個人的に感じた事柄やそこから得られたものが具体的にどういうものなのかというのを考えつつ、わかりやすい何かにまとめていけたらと思います。

 

 

 


トークパートについて

 ではまず、イベントで実際行われた順に、最初はユニットメンバーによるトークバラエティーパートについて感じたこと、考えたことを書いていこうかと思います。
 さて、先にこのパートもエビスト三本の柱の内の一つであるとは言いましたが、実のところそれは別段、その内容を他のコンテンツのそれと比べた場合に取り立てて優れたところがあるからというわけではなかったりします。
 そして、じゃあそれはエビストのそれが他と比べて劣っているということなのかというと別にそういうわけでもありません。
 ただ、こういったアイドルバラエティー的なことは大半の同ジャンルコンテンツでも行われているものですが、個人的にはその分野においては一律どこも大した差はないと思っていたりします。
 全部、平等に同じような面白さを持っており、同時に同じようなレベルのつまらなさがあるかな、と。まあ、そういうものです。
 逆に、そこにこそ一番力を入れています!みたいな二次元アイドルコンテンツも見たことはないですし(もしかすると近年ではVtuberがそれに当たるのかもしれませんが)。
 なので、そこに関しては一定の基準さえ満たせていればそれでいいと思っていますし、エビストのそれもそこら辺は問題なくクリア出来ていると思います。
 ユニットメンバー全員が程々に喋ることが出来て、程々にボケることも出来て、程々に見ていて面白ければこれに関してはそれでいいのです。
 ……というと話が全部終わってしまうわけですが、それでは何故エビストにおいて、そんな特段優れたところのないどこのモノとも同じ程度のクオリティであるトークバラエティー部分が柱の一つになっているのか。
 その理由は、先程までの前提をいきなり全部引っ繰り返すようで何ではありますが、実はエビストのそれには一つだけ、他と比べてその分野で突出している部分が存在しているからなのです。
 ではそれは一体何なのかというと、率直に言って『顔の良さ』ということになるかと思います。
 ……まあまあ、本っ当に身も蓋もない話ですけども、ハニプラのメンバーは全員とにかく顔がいい。
 今、数ある二次元アイドルユニットのその中でハニプラが間違いなく一番になれる要素があるとするならば、それは確実にメンバーの『顔の良さ』になるかと思います。
 割かしら外見よりも実力の方が重要視されることが多い女性アイドル声優界であったりするのですが、そんなアイドル声優を集めてユニットを作るという延長線上にある以上、二次元アイドルコンテンツ界においてもその傾向は顕著であり、例外ではありません。
 しかし、そんな流れに真っ向反逆するかの如く、恐らくハニプラはメンバーを選ぶ際明確にその外見こそが重要な判断基準に組み込まれているかと思われます。
 けれどまあ、見た目なんてものは人それぞれ千差万別に好みはありますし、自分のそれが推しユニットに対する贔屓目である可能性もかなり多分にはありますが、それでも尚、限りなく客観的に見た上でも相当に顔の造作の整ったメンバーがハニプラでは意図的に集められていることは明白と言ってもいいと思います。
 なので、その一つだけ圧倒的に強い要素を十全に活かす。
 そういった意味では、そんな整った顔を持つメンバーによるトーク&バラエティーというものは他と比べて一つの突出した強みのある分野と言えるかもしれません。
 まあ、まとめてしまうとそんな、ちょっとどうかと思う結論に行き着いてしまったりするわけですが、そうなってくると今度はコンテンツに対してある一つの疑念も生じてきたりします。
 疑念、すなわち「じゃあ、それだけの綺麗どころをわざわざ寄り集めてユニットを作っているのならば、二次元内の作品世界を軸にするというよりはどちらかというと三次元のリアルユニットの展開の方に比重を置いている作品なのではないか?」と思えてくるかもしれません。
 どれか一つでも勝っている部分があるのならば、そこに狙いを絞った展開をしているものではないのか。確かに理に適っています。
 しかし、自分の見る限りではどうもこの8 beat Story♪というコンテンツはそういうわけでもなかったりするのです。
 拘りを持って作った強いポイントがあるのに、そこだけをメインとしているわけではない。
 そこには非常に興味深い、エビスト特有の奇妙なバランス感覚としか言いようのないものが存在していたりするのですが、これまでの活動や今回のイベントでそれも改めて浮き彫りとなってきたように思いますので、そのことについても少しばかりここで自分の考えを書き残しておきたく思います。
 確かに、先にも書いてきたようにエビストはリアルのユニットでの活動にも、企画の柱の一つとしてかなり力を入れてはいます。
 その証左として、基本的に参加はフリーで、人によっては何枚でもCDを購入することでお渡し券を積み、延々とメンバーとの接近戦をループ可能な地下アイドル的リリースイベント等も頻繁に行っていたりもしますし、実はこの形式のリリースイベントを行うのは二次元アイドルとしてはかなり珍しかったりもします(大抵はあっても抽選方式による選別がなされ、接近戦も原則一回限り)。
 「あくまでキャラクターこそが第一であり、その中の人である声優を売り物として前面に出すような展開は二次元アイドルというジャンルのコンセプトに反しているのではないか?」
 そんな議論も噴き出ているようなメジャー作品が存在する昨今において、そういう批判もこれを見れば裸足で逃げ出すのではないかという程に開き直った数々の声優最前面押し出し企画もエビストには存在していたりもします。
 しかし、かといって本当の地下アイドルのように金を積めば積むほど、特典が豪華になりメンバーとの距離が縮まるようなシステムが実装されているわけではありません。
 イベントの物販等においても、別に担当声優を使ったチェキやブロマイドのような直接的なものが作成されて売られているわけでも、特典としてついてくるわけでもありません。
 そういった感じで、リアルでの声優ユニットを軸とした商売を目論んでいないわけではないのですが、かといってそれに振り切ってしまっているわけでもないという、何とも言い難いバランスの上にエビストのそれはあったりするのです。
 そして、そうやってリアルでの展開にも力を入れているからといって、ではエビストにおける作品世界とキャラクターは比較して扱いが軽いのかというと、それがまたそういうわけでもないのです。
 というかむしろ近年は明確に作品内のストーリー展開に力を入れていて、キャラクターの設定や物語を他作品以上に現実へ反映させるようなことにも挑戦していたりするのです。
 ハニプラとは別のユニットとして展開している2_wEiでは特にそれが顕著で、そのライブにおいてはあくまでキャラクター自身がステージに立っているものとして、演じている個人としての言動は剥奪されているほどの拘りぶりと徹底ぶりであったりもします。
 普通そこまで徹底した拘りをもって現実よりも物語の世界観に重きを置く作品は、リアルでの声優ユニットとしての展開等はむしろ控えたがるものであるように思えます。
 そういった例としてはナナシスなどがまさにそうで、かの作品においてはライブ以外でのキャストの売り出しというのは極々最小限に抑えられているように見受けられます。
 キャストよりもまず第一に作品を見て欲しい、物語にこそ一番に触れて欲しい。それはそれで十分に理解の出来る一つの在り方でしょう。
 一つの味にこだわり抜いて、その味しかメニューに置いていない職人気質なラーメン屋に通ずるようなものかと思われます。
 そうなるとエビストも、昨今の作品内世界観に対する拘りぶりを見ているとむしろリアルでのキャスト押し商売なんかは「そういうのじゃないんで」と突っぱねたがりそうなものだと考えられます。
 考えられますが、しかしこれまで散々書いてきたようにそんなことも全くないというのが驚くべき実情であったりするのです。
 一番そういうことに拘って運営しているだろう2_wEiにしても、とりあえず作品世界には全く関係ないけどもそれはそれとして顔のいい女性声優に何かしらをさせたい!みたいな、何とも言えない欲望がそのまま形になったような商品展開が同時に存在していたりもするのです。
 いや、それならば……それならば、そんな現実におけるキャスト押しの売り方が何かしら作品世界に対して影響を及ぼすものになっているか、あるいは作品世界の現実への反映がそういう活動においても為されているものなのかと思うかもしれません。
 もしそうだとしたらその作り込みには恐れすら抱いてしまいますが、安心してください、そこら辺の連動も実に全く存在していないのです。
 言うなれば完全に「それはそれ、これはこれ」という、一種異様な程の割り切りぶりで作品そのものと現実の声優ユニットは同時に、同じくらいの力を込めて売り出されているのです。
 これこそが、前述したようにエビストの奇妙なバランス感覚というものになります。
 その二つを何とか理由をつけて混ぜ合わせることに苦心している作品や、あるいは最初からどちらか一方をバッサリと切り捨てているような作品もある中で、別にそこは交わってる必要なくない?と開き直って混ざらないまま一緒にやるという選択は豪快といえば豪快にも程がありますし、特異といえば相当特異な形態であると思われます。
 かといって、それもどちらかが独走を始めてしまった途端に一気に破綻してしまいそうな危険性があるように思いますが、そこら辺にしても「まずは8 beat Story♪という作品がありき」という態度はしっかりと一貫していたりして、本当にそういう部分のバランスの取り方が何とも独特なのです。
 8/pLanet!!はあくまで8 beat Story♪という作品の楽曲を歌うためのユニットであり、担当する作品内のキャラクターも一緒にあってこそのメンバーである。
 そこだけは本当にしっかりしていて崩れたりしたことはありません。作品と離れた一つのユニットとして楽曲を歌うようなこともなく、ユニット内にある限りはキャラクターを担当していないメンバーもいません。
 だけどまあ、それはそれとして普通のアイドルバラエティー的な企画やリリイベなんかも積極的にやっていくよ、と。
 こうして文字にしてみるとハチャメチャにも程がある言い分ではありますが、しかしそうする理由も、ある程度こちらから勝手にという形ではありますが、推察することが出来なくはないのです。
 あくまで個人的な推測ではありますが、恐らくエビスト運営はコンテンツの間口を広げるという目的の方をこそ重視して、現実でのアイドル的な売り出し方を作品世界とは全く別のものとして展開しているのではないでしょうか。
 コンテンツを追いかけるにあたって、その全部を楽しもうとする層は実際多数派ではあるかもしれなくても100%というわけではありません。
 楽曲だけは聴いている、あるいは好きな女性声優がいるから気にしている、作品にはそんなに興味はないけど美味しいところはつまみたい。
 そういう層も少なくない数存在していることは確かでしょうし、自分自身もそういった関わり方を否定するつもりもありません。
 そして恐らくエビスト運営もそのつもりで、そういう層がいるのなら否定することなく、その層に向けたメニューもある程度維持していこうと思っているのではないでしょうか。
 キャストが可愛いからという理由で作品に興味を持つ層は、これ程の顔面的逸材を揃えている以上確実に一定数存在するでしょうし、あるいはそういう層の取り込みも狙ってのユニットメンバーの選考基準でもあったのかもしれません。
 そういう人達に「ウチのラーメンはこのこだわり抜いた一杯しかねえぞ!」と言うよりも、むしろ「何でもあるから好きなの食べていってよ」というのが運営の目的としているところなのではないかと考えることでも出来るのではないでしょうか。……買い被りの可能性大ですが。
 しかし何より実際、今回からユニットに加入した新メンバーは元々別のところでアイドル声優としての支持基盤を持っているので、もう「エビストって何? 食べ物?」くらいの意識でとりあえず推しが出演しているらしいからと、その新メンバーだけを目当てに今回のイベントに来ていた人達も少なくない数存在したと思われます。
 そういう人達のためにも、今回のイベントでは作品の内容を全く知っていなくとも楽しめるようなアイドルバラエティー的なパートを入れることが必要不可欠ではあったのでしょう。
 作品世界の再現に拘っていた昨今の体制にありながら、それでもそんな拘りと交わることのないパートをわざわざ組み込んでいたこと。
 そこに、この別物として割り切ったリアルアイドル的な売り出しは、運営の欲目というよりもむしろあらゆる人に楽しんでもらうためという推察の根拠を見出すことが出来るのではないでしょうか。苦しいか……まあ若干苦しいですね……。
 しかし、何かに対する拘りはあっても決して頑固というわけではない。そのことだけは間違いないかと思います。
 その柔軟さは悪く言えば中途半端ということになるかもしれませんが、個人的には好ましく思えますし、少なくともここ一年力を入れて取り組んできたであろう作品世界の構築という点では決して中途半端な仕事はしていませんでした。
 そういう意味で中途半端なのはむしろ今まで論じてきたアイドル売り路線の方だけです。
 しかし、それはたとえ中途半端であったとしても、あくまでコンテンツのバランスを崩さないための調整の結果でもあるのでしょう。
 さて、まあ長々とそんな風に考えてきた結論としては、そういうハニプラの現実におけるアイドル声優ユニットとしての側面は、コンテンツへの入り口を広げること、また作品自体に興味がなくても他の部分が気になるから追ってはみたいという層を繋ぎ止めるという目的でも、やはり欠かすことの出来ないエビストの柱の一つなのではないかということです。
 けれども、それはあくまで柱の一つであり、コンテンツのメインとするところではない。故にある程度のレベルまで制限したものを出しているのではないでしょうか。
 そして、やっぱり何より顔がいいから。それはそれとして顔がいいからそういうこともやりたいじゃん!、と。
 みんなも好きでしょ!? 見たいでしょ、顔のいい女性声優がわちゃわちゃしてるとこ!!
 ……見たい!! ごちゃごちゃした理屈は投げ捨ててそれは見たい!!
 だったら見たいものを見せてやる!! 何故なら自分達も見たいから!!
 ……と、最後に思わず本音を書き殴ってしまいましたが、まあ実際突き詰めるとそういうことかとも思いますし、それは今のところ間違っていないのだと、正解だと信じます。
 コンテンツにそれを望む人がいて、それを切り捨てない結果として、そして自分達もそれを見たいものとして、エビストのアイドル売りやトークパートは作品を支えるものの一つとして成り立っているのだ、と。
 まあ、そういうことを今回のイベントのトーク&バラエティーパートを見ていて、改めて感じたり、考えたりしていました。

 

 

 

 

リーディングパートについて

 さて、今や立派にエビストの売りの一つとなった作品ストーリーであるのですが、そのことを改めて強く再認識したのが順番的にもトークの次にあたるこのパートでした。
 個人的にも今回のイベントで一番注目していた部分でして、それというのもエビストがその作品内ストーリーの面白さをコンテンツにおける主軸の一つとする現在のような体制へと変化してきた過程で、かなり大きなターニングポイントとなったのが前回、二年前に行われた同様のリーディングイベントだからです。
 そして今回はあの時行われたものから更に色々とイベントにおける作品ストーリーの扱いについて実験的な試みを経てきた上での再度の朗読劇ということになれば、否が応にも期待は高まります。
 前回観覧した時にもいたく衝撃を受けたものの、その理由が一体何なのか上手く言葉にはしきれなかったエビストのリーディングイベント。
 ここではそんな同種コンテンツにおいてもあまり類を見ないエビストにおける朗読劇というものの特異性や、あるいは現実においても展開するストーリーという近年エビストで実験的に行われている形式について改めて、今回のイベントでのそれを見た上で感じたこと、わかったことなども含めて考察し、まとめていきたいと思います。

 


 ではまず、今回再び二年前のものと近い形の朗読劇が見られたことで、個人的な感覚ではありますが改めて確認出来たエビストにおけるそれの独自性というか、面白さの理由について考えていきます。
 まあ、そもそもこういう二次元アイドルものというジャンルにおいて朗読劇という形のイベントを行うこと自体がかなり珍しかったりもするのですが、それに近いモノ自体は昔から存在していたりもします。
 その手のもので恐らく一番メジャーなのはラブライブにおけるライブ中のボイスドラマパートがそれにあたるでしょう。
 それはライブでの間を繋ぐために、行われている最中のそのライブに関連したサイドストーリーをボイスドラマとして会場内で流すというものでしたが、その内容は基本的にテレビアニメ等の作品本編と呼べるストーリーとは全く関係の無い番外編であり、なおかつ全編コメディタッチの展開であるというのが主流でした。
 故に、そういった大勢が参加することで各々の集中に不向きな雰囲気が生まれやすく、なおかつ物語の再現性のない現実でのイベントにおいては、真面目に聴いていてもいなくても特に問題の無い当たり障りのない内容のドラマを流すものであるというある種の不文律、共通認識のようなものがこのジャンル内には存在していたように思います。
 エビストにおいても二年前にリーディングイベントを行うことが発表された当初は、誰もが本編とは特に関係の無い番外編的なコメディ調のストーリーを目の前でキャストが演じて読み上げてくれる姿を見ることを主な目的として楽しむイベントだろうと思っていました。……誰もがは言い過ぎたかもしれません、まあ自分個人としてはです。
 ですが、実際蓋を開けてみるとそんな当たり障りのない内容の物語というものでは全くなくて、終始真面目な雰囲気かつゲーム本編で展開されているメインストーリーから完全に地続きの、本編の一部と言ってしまってもいいような一つの物語を朗読劇として行うイベントだったことが判明し、当時実際に参加したファンは大きな衝撃を受けることとなりました。
 といった感じで、まずエビストにおける現実での朗読劇の独特かつ面白い部分の一つが、そこで展開される物語の内容が作品のメインストーリーと繋がっているシリアスなものとなっているところにあったりします。
 それは二年前でもそうでしたし、今回の三周年イベントのシナリオも変わらずにそうなっており、そうなるとエビストの朗読劇というのはやはり意図的に行われている現実のイベントにおける物語展開の一環なのだなということを改めて感じました(現実での物語展開とは一体なんぞやということは長くなるので説明を省きます*2 )。
 まあ、自分自身同ジャンルの全ての作品のイベントに足を運んでいるというわけではないので同じくシリアスな朗読劇を行っている作品の存在を取りこぼしている可能性もありますが、少なくとも『ゲーム内ストーリー→そこから続くイベント朗読劇の内容→それがまたゲーム内ストーリーへ繋がる』というシナリオの積層構造の構築を試みている作品は相当稀なのではないでしょうか。
 そんな風に、ある種の独立した舞台劇とも言えるようなことをエビストは行っているわけですが、もしそれだけならばそれこそ本当に単なるどこにでもある舞台劇というだけで終わってしまいます。
 そういうわけでは勿論なくて、この朗読劇にコンテンツ独特の味と面白さを感じさせる部分はまだ存在しており、それら全部を引っくるめることで何やら言葉にし難い新しさのようなものを感じられるようになっているのです。
 そんな独自性のもう一つといえるものが、この朗読劇の直後に今それを演じていたキャスト達がアイドルへと転じて行うライブパートが存在しているというところにあります。
 それは一体どういうことなのか説明すると、つまりこの朗読劇のストーリーはその直後にあるライブパートへと綺麗に接続されるような内容のものになっているということであり、それこそがもう一つの独自性と面白さの重要なポイントとなっているのです。
 朗読劇のストーリーは、かなり噛み砕いてしまうと二年前のものも今回のイベントのものも共通して「色々あった末に最終的にユニットがライブを行う」という結末に向かって進行していく物語でした。
 つまり朗読劇はそれ単体で完結しているわけではなく、その後に待っているライブパートも内容の一部に含めて完成する形になっているのです。
 さて、ではそれの一体何が面白いのかというと、簡単に言えば「普通ならばキャストが歌って踊っているだけというはずのライブに、それを行う理由や背景といったフィクション的なストーリーが乗ってくる」ということにその面白さがあるかと思います。
 今更書くまでもないほど当たり前のことでありますが、元来、二次元アイドルコンテンツにおけるライブというものは作品のストーリーからは完全に独立した別個のものでした。
 あるいは作品における一つの完結したストーリーやライブシーンが存在している上で、その一種のリプレイ集的なものをキャラクターではなくキャストがライブで行うというのが主流かと思われます。
 故にそこにはフィクションドラマ的なストーリーは殆ど存在しておらず、物語とは隔絶されたお祭り行事のようなものであり、そこから各人が汲み取るエモーショナルさというものはコンテンツそのものが積み重ねてきた総合的な歩みへの感傷を背景とするものが大半であるように思います。
 しかし、このエビストの朗読劇からライブパートへ繋げるという方式では、そのフィクション的なドラマ、人工的に作り出した物語のエモーショナルさを本来それらのものから隔絶されているはずのライブに直接付与することが出来るのです。
 またそれにより、たとえ声だけとはいえども目の前で物語中のキャラクターを演じている人間がそのままシームレスに現実的なアイドルへとスライドしてライブパフォーマンスを行うことで、架空のキャラクターと現実にいるキャストに奇妙な同一性の錯覚が生じているように感じられ、二次元アイドルコンテンツがライブにおける究極目標としているキャラクターとキャストのシンクロをある程度実現することも出来ているのです。
 改めて言葉にしてみると、これこそが二年前にリーディングイベントへ参加した時に感じたその可能性と面白さであり、二年を経て再び今見たとしてもまだ変わらずにそこに感じられたものであるのかなと思います。
 しかし、実の所これ自体は別に全く新しい手法であるとは言い切れないもので、一歩間違えれば普通に単なる既存のミュージカルでしかないですし、それとの厳密な差がどこにあるのかと言われると正直自分自身答えが出せないものでもあります。
 けれど、実際に見てみると確かに何かが違うと思える奇妙なバランスの上にこの朗読劇とライブパートの繋がりは成り立っており、それこそが上手く言語化出来ない原因となってもいるのです。
 それでも敢えて無理矢理その違いを定義してみるならば、その言葉に出来ない不思議さは『観客の見る映像が二次元イメージに頼る部分と実写で行う部分とで分かれているようなものを、強引に繋げて混ぜ合わせること』で生まれているのかなと思います。
 キャラクターの動きや表情の表現全てを現実で行うのならば単なる実写化あるいは舞台化でしかありませんが、朗読劇としてそこで展開されている物語は実際目の前に映像として現出しているわけでもないので各々が補正した二次元イメージを何もない向こう側に見るしかなく、そうしながら同時に現実で行われる歌やダンスにもその残像を重ねるという、何とも言えない、本当に何とも言い難い奇妙なゴーグルを通して空想とも現実ともいえないものを見ている。
 そんな独特さと、面白さと、何より奇妙さがエビストにおける朗読劇の魅力であるのかなと、今回それを再び見られたことで何とか自分の中には落とし込めたかなという感じです。
 そして、そこら辺をより音楽ライブという要素に比重を置いてブラッシュアップしたのが同コンテンツ内で行われている2_wEiの公演ということになるのかなとも思いますが、そこら辺のことまで考え始めると本当にキリがないのでとにかくもうここで一旦これについてはやめにします。
 しかし、まあもう一つだけ最後に、今更の上に何回目といった感じではありますが、やはりエビストのストーリーは面白いし良く出来ているなぁということを改めて、今回のリーディングパートを見ていて思いましたよ……ということを書かせてください。
 いや、最初期からゲームをやってる者としてはそれが未だに信じがたくて何度も疑心暗鬼に陥ってしまうという病気にかかっていたりするのですが、そうは言ってもコンテンツ三年間の歴史から考えると実はストーリーが良くなった時期の方がストーリーがヘンテコだった時期よりもずっと長くなっているので、これはもう自信を持ってエビストのストーリーはいいものだと言い切ってしまっても、何だったら最初からストーリーをコンテンツの大きなセールスポイントの一つとしてやってきてたしと、歴史改変すらしてしまってもいいんじゃないかと思います。
 まあそれくらい、今回のリーディングのシナリオは素晴らしかったです。手放しで褒めてしまいますが。
 長すぎず、かといって短すぎもしない絶妙な尺の中に、ハニプラがこれまで積み重ねてきた物語を振り返って、その要素をしっかり落とし込む構成。
 後に詳しく後述しますが新曲の歌詞を軸にして8/pLanet!!というユニットのスタンスや物語全体のテーマを改めて定義してみせる辺りや、この直後のライブパートに向けて物語のボルテージとそれを見ている人達のテンションをしっかり盛り上げて綺麗に締めるクライマックスなど、本当に良く出来ていて感心することしきりでした。
 そして何よりこれほど真面目な内容で、かつ本編と地続きのものとしてこういうシナリオの朗読劇が出来るということに、改めてこの三年間で積み重ねてきた物語や構築してきた世界観の重みや強さ、独特の面白さ、エビストの味というものを感じられたように思います。
 しかしそうはいっても、今回のリーディングで描かれているのは、結局穿った見方をすればありがちとも取れる主人公ユニットの真っ直ぐな心根の描写や彼女達の辿り着いた結論ではあったりします。そこに他のコンテンツのそれとの大きな差はないとも言えるかもしれません。
 けれど、そんな綺麗事をそれでも特別なものだと思い、そして尊いものだと信じたくなってしまう。
 そう思ってしまう、感じてしまう裏にはきっと2_wEiの徹底して8/pLanet!!の対極を行くような悲惨な境遇とねじ曲がった運命の物語が存在しているからでしょう。
 こうしてハニプラの綺麗な物語を眺めては同時にその影にいる2_wEiを思い出すと、それと向き合うためには決してその場限りのありきたりな理想論だけでは済まされないだろう、彼女達の想いを貫くことの重さを感じてしまいます。
 そういう立場も信念も理想も違う二つのユニットが存在することで発生するシナジーが、本当に今とても良い感じの深みのようなものをこの物語に与えているのだなということにも今回思い至ったりしました。
 他にも、メインストーリーの更新予定という新情報に湧く会場を見てファンの物語に対する期待もかなり大きくなっていることを思い知ったり、重要なメンバーのソロ曲をストーリーの更新に合わせて実装する予定ということで物語と音楽を結びつかせることによる更なる相乗効果を予感させたりと、今後もストーリー面に関してエビストは相当力を入れていくであろうことが今回のイベントでは存分に伝わってきました。
 そんな風に、やはり作品内ストーリーというのは今やエビストを支える大きな柱の一つであること、故にそれを示すためにも今回のリーディングパートがあったのだということを、改めて三周年イベントを通して強く認識させられた次第でした。

 

 

 


ライブパートについて

 トークバラエティ、朗読劇ときて、最後に残ったエビスト三本柱の一つであり今回のイベントでも順番的に最後に行われたライブパートについても、何とか長くなりすぎないように三周年イベントで新体制になったそれを実際に見た上での感想やら考えたことなどを書いておきたいと思います。
 とはいえ、あまり長くなりすぎないようになどと心配することもないかもしれません。
 何故ならエビスト、ひいてはハニプラのライブパフォーマンスについてはもういい加減書きたいネタも尽きたわというくらいの長文をこれまで散々書いてきましたし、今回のイベントでもそれはいい意味で、今まで書き殴ってきた感動と変わらぬものであったからです。

 ですが、正直なところイベントを見る前はメンバーが二人も抜けて、そこに新メンバー二人を加えてというユニットとしては相当しっちゃかめっちゃかになってしまっている状況にあり、そこでいきなり新体制に変わってから大して日も置かぬ内にぶっつけで、しかもこういった大きなイベントを初お披露目の場として新しい8人でのライブを行うということで、果たしてどうなることかとずっと不安にも思っていました。
 しかし実際ステージを見てみると、以前のものと比べても全く遜色のない、変わらずにレベルの高いパフォーマンスを維持出来ていて、こちらも大いに安心することが出来ました。
 というわけで、上でも書いたようにそういったダンスや歌などの総合的なパフォーマンスのレベルの高さに関して以前のものと現在のものに差がないのであれば今更何か言うべきこともないわけですが、それでも一つだけ何らかの変化を感じたとするならば、残っている六人の意識というものを挙げることが出来るかなと思いました。
 意識……まあ別に大した意味があって使っている表現でもなくて、どんどんとパフォーマンスのブレが少なくなり、どんなステージにも、状況にも動じずに堂々とこなせるようになってきたんじゃないかなと感じ、それを何となく覚悟とか、意識が固まったという言い方に置き換えられるかな、と。そんな話なのですが。
 そういう点では以前と比べてやはり確かな成長を感じるし、円熟といった感じの今回のステージでした。
 言いたいこと終わっちゃった……。まあ本当に、ライブパートそれ自体に関して言えることもそれくらいです、良い意味で。
 元々三年という歴史の中で一番早くに出来が良くて強い部分として成り立った柱なので、本当に何回目かくらいの改めてでそれを再確認する感じでしたね。
 とはいえ、ライブを見て思ったことで他に書きたいことが何もないかというとそういうわけでもありません。
 ここから少しだけ長くなるかもしれませんがまだ書いておきたいことは一つ……まあ二つくらいあって、まずその一つこそが新曲である『Precious Notes』の素晴らしさについてということになります。
 ライブパートは元々全体的に今回も素晴らしいものであったことは先にも書きましたが、その中でも一番何が素晴らしかったかというとこの『Precious Notes』周りの扱い――楽曲自体の良さとそれを更に後押しするような実際のパフォーマンス、そしてこの楽曲を今回のライブで送り出すにあたっての背景の作り出し方になるかと思います。
 さてこの『Precious Notes』、恐らく以前までの体制におけるテーマ曲である『ファンタジア』に代わって、色々な区切りや更なるスタートという意味も込めて作品に新しいテーマ曲をということで用意された曲だと思われるのですが、実際今回のライブで歌われたのを聴いて改めて特筆すべき出来の楽曲であることを感じました。
 まず作品の顔となる新しいテーマ曲ということで、そういった曲の立ち位置を受けてのライブにおける8人でのダンスパフォーマンスが文句のつけようがないレベルで素晴らしかったです。
 これまでも一番8人でしっかりフォーメーションダンスをする楽曲はテーマ曲であるファンタジアだったのですが、やはりそれに代わるというか、そこから更に進化しようという意図を感じる振り付けだったと思います。最高でした。
 そして楽曲のメロディー自体の出来も勿論言わずもがな良いんですが、それより何よりも今回ハッとさせられたのは今までにないタイプの歌詞の作り込み具合についてでした。
 どういうことかというと、これまでのハニプラ楽曲において明確にストーリーの内容が反映されているだろう歌詞の曲というのは実は『BLUE MOON』くらいだったのですが、『Precious Notes』はそれよりも更に深いレベルで本編ストーリーのこれまでとこれから、そして作品自体に込められた根幹のテーマ性のようなものが歌詞に組み込まれているように感じたのです。
 ライブの前のリーディングパートにこの曲の歌詞の一部から拾い上げたような台詞があることなどからも、それは明らかであるかと思います。
 そして今回ライブパートで新曲が歌われるにあたって、その歌詞の内容を一部反映したそんなストーリーの朗読劇からライブに繋がるという構成がこの楽曲の本来持っている実力以上にその強さを押し上げていたようにも感じます。
 ハニプラとは違う2_wEi独自の強さの一つが楽曲の歌詞に一貫して込められている二人の境遇や情念についての描写であると思うのですが、そういう強さを今後はハニプラでも使っていくのかなという印象をそこから受けられるように思いました。
 無論、物語のテーマが込められた楽曲だけが増えていくというのもそれはそれで食傷気味の事態に陥る場合もあるので、バランスを見極めていって欲しいところではあります。
 が、そうは言ってもとにかく強いものは強い。その強さが、2_wEiで積んできたものをフィードバックして遺憾なく発揮されている曲であると思います。
 8/pLanet!!の新しくて強い武器だなぁと、改めてそういういう印象の新テーマ曲でした。
 そして、そういった2_wEiからの積み重ね方面からもう一つ拾ってみると、やはり直前のリーディングパートのストーリー的な盛り上がりをバトンリレーしてのライブパートはそれのみで始まるものよりも感情のブーストがかかるということにも、散々上の朗読劇についての部分で書いてはきましたが改めてライブパート方面からの視点でも言及しておこうかと思います。
 実のところ2_wEiとは違ってハニプラのライブでは今までも、そして今回のイベントにおいても、メンバーは特にライブの最中においてキャラクターを演じるようなことを注文されてもいないし実際に行ってもいないのですが、今回のようにやはり直前にああいった形の朗読劇を通すとキャストとキャラクターとの間に不思議なシンクロを感じられるようになっているなとライブを見ていて思いました。
 そして、それは新曲を歌う前のMCから特に強く感じられて、その部分は一部では社本さん、二部では山下さんが担当し、それぞれが作中と現実でも同じユニット内での重要な役割(センターとリーダー)を果たしながら語りかけてくるというもので、そこでは果たして語っているのが本人なのかキャラクターなのか境界の曖昧な、非常にいい塩梅の重なりを見られたように思います。
 また朗読劇の内容が一部と二部で完全に別のものであることから、そこから続くライブそれ自体も一部と二部でセットリストが別であるという以上に毛色や背景すらも違うように感じられて、そういうライブの持つ意味や理由を自在に作り替えられるという点でも、今回のこのイベントの流れを受けて見ることになったライブパートは非常に興味深いものがあったかなと思った次第です。
 さて、結局普通に長くなってしまいましたが、最後に今回のライブパートにおいてこういった形のものが出されたことについて色々と腑に落ちた言葉があるので、そのことに関しても思ったことを書いた上で締めたいと思います。
 これは二部のリーディングパートのストーリーや、ライブ終わり際の社本さんのMCでも共通して言葉にされていたのですが、これからのハニプラのライブにおいては『観に来てくれる人、みんなに楽しんで笑顔になってもらいたい』というのがテーマであり、目標であるとのことでした。
 そしてそんな言葉の通りの、観てくれる人達に楽しんでもらおうという目的意識が今回のパフォーマンスにはハッキリ表れていたように感じられました。
 ライブパフォーマンスというもののクオリティーは年々、同ジャンル内のどのコンテンツにおいても上昇しており、どこを見ても明確な差はそれほど感じられないという今の二次元アイドル界隈であるのが現状です。
 しかし、その中に在ってなおしっかりと自分達のやりたいこと、進むべき方向がハッキリしているモノはやはり一段違って見える気がします。個人的には。贔屓目かもですけど。
 そして何より、今まで積み重ねてきた基礎的なパフォーマンスのレベルの高さがあるからこそ、この一年2_wEiでやってきたことや、今回のイベントや二年前のように朗読劇を利用することによるライブの盛り上がりのような新しい形の見せ方など、面白いと思わせられる何かというものを実現出来たし、まだまだ作っていくことも出来るのではないでしょうか。
 そういったことを、今回のライブパートそれ自体や、そこに目標として込められたテーマや想いというものから感じられたように思います。

 

 

 


新メンバーについて

 さて、イベント内の三つのパートについては全て感じたことや考えたことについて書きたいものは書けたかと思うのでそれらのまとめに入りたかったのですが、ここから更にもう少しだけイベントを通して思ったことを書こうかと思います、新メンバーのお二方について。
 やはり今回のイベントで一番目新しい部分でしたし、またある意味一番試されていた部分であった以上、お二方を実際にハニプラのメンバーとして初めてステージの上で見たことで思ったこと、気づいたこと、考えたことなどはたくさんあります。それは悪い意味でなくて。
 それに、こんな難しい状況の中で新メンバーとして加わってくれたお二人への感謝や、書き残しておきたい想いなども多々ありますので、この場を借りて少しでもそれを言葉にしておけたらと思います。

 

 

 まずは天野さんについて。
 彼女については、前任者である吉井彩実さんの声質や演技との間にそれほどの差や違和感がないことに最初かなり驚きました。
 多少の差異はあるにはありますが、水瀬鈴音の声としてはほぼ違和感を覚えないレベルと言ってしまってもいいかもしれません。
 元々の声質がある程度似通っているのもあるのでしょうが、前任者の記録を参考にして大分寄せた演技をしてくれてもいるのだろうなと思います。
 そこについては本当に感謝しかないですし、むしろよくここまで寄せられる人を見つけてきたな運営……という多少の恐ろしさすら感じます。
 また御本人の外見についてもですが、緩いウェーブのかかったロングヘアは吉井さんとも鈴音とも共通しているヘアスタイルですし、遠目から見る背格好まで本当にそっくりで驚きました。
 しかし、まだまだキャリアも浅く年齢も相当若いであろう新人であることからか、あらゆることにあたふたしつつ縮こまってしまっている感じは、落ち着いて成熟していた女性という印象だった吉井さんと対照的で、そうしてみるとまるで吉井さんの妹であるかのようにすら感じられてきます。
 いや、そんなことある? 声質も外見も似通っている妹みたいな存在がいて、その役割を引き継ぐとか。ディランディ兄弟かよという感じですが。
 とはいえ、全部が全部そんな風にそのまま先代からスムーズに移行出来ているわけでもないことも、正直感じたところはあります。
 特に歌声などは、まだまだ鈴音の演技のままで歌い続けるのは難しいのかなという印象をライブを見ていて受けたりしました。
 とはいえ、新曲の『Precious Notes』の収録盤音源ではある程度寄せた歌声を出せているので、そこは経験を積んでいけば向こうも我々も徐々に慣れてくるのかなという感じでもあります。
 またダンスパフォーマンスなどは同ジャンル内で比較してもかなり激しく動く方である8/pLanet!!ですが、天野さんはその辺りについては別の場所でキャリアを積んでいる様子も見受けられないにも関わらずしっかり他の継続メンバーに遅れることもなくついていけていて、相当頑張って練習してくれたのかなぁとか、はたまたダンスの素質もしっかりあるのかなと思っては、改めて感謝とその才能への驚きを感じるばかりです。
 逸材、いや、本当に逸材ですよ。大型新人ですとも。
 あとは御本人の性格としてはまだまだキャリアがまっさらな新人であることやチームに馴染みきれていないところも関係しているのか、かなり引っ込み思案かつすぐにおどおどしてしまう小動物的なキャラクターであるのかなという印象ですが、それがむしろこれまでユニットになかった新しいポジションとして上手くハマっているのではというのも感じました。
 メンバーが先輩として甲斐甲斐しくフォローに回るのも、彼女が現場に慣れていない新人である以上に本人の性格や言動等に支えてあげたいと思わせるものがあるおかげなのでしょうか。
 そこには変な遠慮や気まずさのようなものが一切感じられなくて、これからユニットの中ではみんなの妹的な立ち位置として活躍していけそうだし、トーク的な部分でもそこを活かした幅が拡がりそうだなと思いました。
 そしてそんなところも関連してということかと思われますが、リーディングパートでは彼女の担当である水瀬鈴音のキャラクターも、鈴音自身が元々持ち合わせていた性質ではありますが、臆病かつ引っ込み思案で心配性な部分がこれまでよりも強調されているような路線へ若干変更されているように感じました。
 前任者である吉井さんは元々一歩引いた立ち位置で全員を支えて包み混む母性のようなものが性格にも言動にも声にも滲み出ており、それを受けて前・鈴音も臆病な性質よりはそういうゆったりと後ろから全員を支えるお母さんのような部分の方がより強く出ていたキャラクターでした。
 しかし後任である天野さん自身のそういう性格やユニット内で収まりつつあるポジションを思うと、そのキャラを修正するのもある程度仕方の無いことなのかなと感じますし、臆病かつ引っ込み思案な部分も元々鈴音自身が持ち合わせていた性質ではあるので、そこにも然程違和感はなかったかなと思います。
 そういう辺りでも本当に奇跡のような噛み合い方ですが、とにかくそんな風に新しい水瀬鈴音の滑り出しとしてはこれ以上無いくらいにスムーズなものではあったと思います。
 いや、奇跡ですよ、割合マジで……。
 実際ある種唯一無二なのではと思えるほどに吉井さん自身と水瀬鈴音のキャラクターは繋がってしまっていた感覚が個人的には大きすぎて、そんな人が抜けてしまった今後に不安しかなかったのですが、それがこの程度の立ち位置や印象の修正で済んだ上で継続していけるというのは本当に奇跡的でありがたいことだと思いました。
 いや本当に……本当にありがとう、ありがとう天野聡美さん……。

 


 次に、山下さんについて。
 彼女については新しく担当することが発表された時にも思いましたが、橘彩芽という作品内でも年長にしてユニットのリーダーを務めるというかなり責任の重いキャラクターにまさか新人をあてがうわけにもいかないでしょうし、元々このジャンル内でかなりのキャリアを積んでいる人を後任として呼んでくる判断については十分納得のいくものがありました。
 それでも一つだけ、山下さんにはこれまで声を担当してきたキャラクターの中に彩芽と近いタイプが全くおらずそこがかなりの不安材料ではありましたが、既にゲーム内で実装されているボイスを聴き慣れた今では演技の面でも十分彩芽としての雰囲気を引き出せているように思います。
 しかし吉井さんと天野さんの場合と違い、やはり前任の青野さんと後任の山下さんの声質は正直全くと言っていい程別物であるというのも事実ではあります。
 演技はまだしも、今回のイベントのライブパートで既存曲を歌われるのを初めて聴いてみて、歌声が全く違うというのにはやはりまだかなりの違和感を覚えざるを得なかったというのを否定は出来ません。
 ただ、ライブにおけるそれ以外の面、ダンスパフォーマンスなどは以前の所属グループでバキバキに鍛えていたこともあって追加メンバーとは思えないレベルでぶっちぎりに上手かったですし、他にも御本人のスラッとした長身のスタイルやサラサラのロングヘア、キュッと釣り上がった細い目などの容貌は見た目からして相当に彩芽先輩レベルが高かったです。
 トークパートにおいてもキャリアの長さを感じさせる堂に入った振る舞いをしており安定感がありましたし、ライブで締めのMCを担当するのもユニット内では新顔であるはずなのに違和感を覚えさせることなく、みんなを引っ張る立場を担当するキャラクターとして立派に勤め上げておりました。
 これらのことから思うに、後任キャストを選ぶ際に似た声質や歌声と、ユニット内で果たせる役割と、キャラクターと比較した容貌、総合的なパフォーマンス力などを秤にかけた結果として、たとえ声質が全く違ったとしても、それ以外の面を重視して山下さんが選ばれたのではないかなということを改めて感じました。
 そして、やはり結果的にその判断は正しかったのではないかなとも思います。
 橘彩芽というキャラクターの立場上、声が似ていることよりも与えられる役割を果たせるかの方が重要であるのだろうというのは今回のイベントを見ていて、また上に書いたような天野さんと鈴音のそれと比較してみても感じたことですし、それだけ難しくプレッシャーも大きい役割なのだということを改めて思い知りました。
 特に前体制ではそういう年長者やリーダー的な役割を比較的年上でありしっかりしたところのあった青野さんと吉井さんの二人で分担して担っていたこともあり、そんな二人が一気に抜けてしまった今、キャリアのおかげでガッシリとした安定感があり他のメンバーを引っ張れる実力もある山下さんの存在は、実際今回のステージを見たところやはりなくてはならないものであるように思えました。
 その代わり声質や歌声などに関してはもう別物として割り切るより他ありませんが、それにしたって決して山下さんが下手というわけではないですし、むしろこれまでとは違う新たな橘彩芽としての魅力と可能性を感じさせるだけのものを十分にライブで見せてくれたと思います。
 そして今回何より驚いたのが、遠目から見た時の山下さんの容姿や佇まいの橘彩芽度の高さでした。
 メンバーが並んでいる時に誰が彩芽先輩なのか一目でわかるといいますか、それくらいまず雰囲気が完全に橘彩芽なのです。
 こうしてみると、エビストがメンバーを選ぶ際に考慮されるのは顔の良さばかりというわけではなく、顔の造作や全体的な佇まい、普段の自然な言動からしてもキャラクターとある程度以上のレベルで合致している人物を吟味しているのかなと推測出来るわけですが(というよりも初期メンバーは恐らく当て書きの可能性が高い)。
 そういうキャストの容姿の面からもキャラクターとのシンクロを狙っていることについて掘り下げてみるのも面白そうではあるんですが、また長くなりそうなので今はきっぱりやめておきます。
 とにかく、それくらいキャラクターと演者の重なりを意識しているコンテンツが選ぶのならば、山下さんも、そして天野さんも、今後間違いのない選択となっていくのだろうと安心して見ていられるというものかと思います。
 また、こうして立場も難しく責任の重いキャラクターについて、しかも途中から引き継ぐというのを承諾し、実際頑張ってくれている山下七海さんには本当に感謝の念しかありません。
 ありがとう、ありがとう山下さん……。

 

 とりあえず、新メンバーについてはそんなことを感じたり考えてみたりした上で、今回のイベントを通じて完全に受け入れられた、飲み込めたかなと思います。
 お二方には重ねての感謝と、今後の更なる活躍への応援をこれからも送り続けたいと思う次第です。

 

 

 


まとめ

 三周年イベントについての感想はこれでひとまず全部書き尽くせたかと思うので、ここからは最後にまあぐっちゃぐちゃのそれを何とか綺麗にわかりやすい結論にまとめて終わりにしたい感じです。
 さて、最初の方でも言ったように、やはり今回のイベントは自分も含めてあらゆるファンが8 beat Story♪の何かを見極めたいと願って足を運んだイベントだったと思います。
 8/pLanet!!の前回のナンバリングライブから一年の間に詮方ない事情でメンバーが二人も卒業してしまい……普通なら再起不能に近いダメージですよ、メンバー二人も抜けたら……その補充に新メンバーを二人加入させたけれども、果たしてそこまでして続けることで何をしていきたいのか。
 また、その一年間で2_wEiがメインのライブを代わりにやってきて、そこでは新たにイベントの中で、あるいはライブの中で物語を見せるという実験的な手法を行ってきたわけでありますが、今後はハニプラもそういった路線でやっていくのかどうか。
 本当に、新体制に移り変わって、それまでに色々と実験的なことも積み重ねてきて、その上でエビストとハニプラが一体どういう風なことをここからの四年目以降でやっていきたいのか、またやれるものなのか。
 そういうものを一度ハッキリと示さないといけないだろうし、示して欲しいと思って見に行ったイベントだったでしょう。
 果たしてこれまでみたいにやれるのか、そしてこれまで以上を目指せるのか。やるのならばどういう形で、どういうことをしていくつもりなのか。
 以上はまあ最初に書いたことの繰り返しではありますが、そこのところを見極めたいという気持ちが誰しもにあったわけです。
 ……というのを踏まえた上で、今回の三周年イベントでの内容の一つ一つは果たしてどうだったのかというのは上で散々書いてきたわけですが、ここからは最後にまあそれらを総合すると一体どのような今後のビジョンが見えてくるのかということについて、あくまで個人的な考えではありますが推察してみたものを書いていきたいと思います。
 まず今回のイベントについてはエビストについての"全部"をやるものだったということは既に書いた通りです。
 今までやってきたこと、積み重ねてきたものをそのまま全部、余すことなく注ぎ込んだこの三周年イベント。
 それを見た上で感じたこと、考えついたことは、結局『それこそが8/pLanet!!のスタイルになっていく』のかなというものでした。
 全部やる。何でもやる。
 何か一つのことを突き詰めたり、それに固執するのではなくて、柔軟に、何でもやれるということ。
 それこそがハニプラの強さなのかもしれない、と。
 例えばこの一年でエビストは現実での物語展開についての実験的な試みを繰り返してはきましたが、結局それをメインにしていく2_wEiと違ってハニプラサイドはそこまでイベントやライブで徹底した世界観を構築しようという意図はないのかもしれないと、今回のイベントを見て個人的には思いました。
 リーディングパートはそういう手法の目新しい面白さがふんだんに詰まっている部分ではありましたが、かといって他の二つのパートとそこまで連動しているわけでもなく、明確に切り離して行われているようにも見えました。
 あくまで色々出来る内の一つでしかないと言いますか、そういうことも程々にはやるけれど、そこに拘り抜いて他を切り捨てるようなことはしないというか。
 ハニプラにおいては上に書いてきたような三つのこと、トークバラエティーも、ストーリー路線も、ライブも、どれか一つに行き過ぎずに全部を楽しめるバランスでやりたいというようなビジョンを示すものが今回のイベントにはあったように思います。
 それはともすれば全部が全部中途半端ということになりかねない危険性もあるかと思いますが、それでもその全てを精一杯やる、どれも一生懸命、自分達のやれるだけのことをやっていくという意気込みというか、気迫みたいなものを同時にそこからは感じました。
 そして、そうしようとする根底には、単なる自分の勝手な妄想が多分に混じっている憶測ではありますが、今回のリーディングパートのシナリオ内でも描かれていたようなハニプラの信念であり、同時に社本さんがライブのMCでも現実での自分達の方針としても語り、恐らく作品のテーマの一つでもある『自分達のステージを見て笑顔になって欲しい、楽しんで欲しい』という想いがあるのかなと思います。
 だからこそ、トークバラエティーも、ストーリーも、楽曲も、ライブも、そのそれぞれにそれぞれを楽しんでいる人がいるのならば全部を拾いたい、それぞれに期待をしている人がいるのならそれに応えたい、だからこそ全部やるというのが、結局8/pLanet!!の運営におけるスタンスなのかな、と。まあ好意的解釈に過ぎる気もしますが。
 ともあれ、様々な人が楽しめるものを提供したい、とにかくコンテンツに参加してくれている人には何よりもまず楽しんで欲しいと真剣に思っているだろうことは、運営側からのイベント後メッセージなどを見る限りでも恐らく間違いがないかと思います。
 だからこそ、今回のイベントでは何か一つにガチガチに凝り固まらずにやりたいことを全部入れてみて、そのそれぞれのパートがほぼ独立しつつも緩い連帯をしている程度の構成になっていたのかなと思います。
 食べたいところだけをつまんでもいいし、全部をしっかりたいらげてもいい。今後どこに惹かれてついてくるかはその人次第のチョイスでいい、と。
 良いように捉えすぎな側面もあるかと思いますが、コンテンツのこれまでを踏まえた上で更にこれからを見せなければいけないという場でこんな全部乗せイベントをお出ししてきたのはそういうことなのかなと自分は受け取りました。
 それを果たしてどう思うかは賛否両論あるかと思いますし、手を拡げすぎることで疎かになる部分、ファンにとってもコンテンツにおいて合う部分と合わない部分での意識の乖離も今後出てくるかもしれません(特に現実的なアイドル売りパートと作品世界の重視派は水と油のように思われるし)。
 また2_wEiのように、ハニプラにおいても世界観の構築を一本貫いていく方がいいのではと思っている人も少なからずいるでしょう。
 しかし、そうやって一つのことに凝り固まらず柔軟に何でもやるということは、今後も作品が面白くなる、あるいは面白くなりそうだと思ったことなら躊躇なく何でも実行出来る、そうして作品が更に進化していく可能性の方も大きいのではないかと自分は思います。
 そもそも2_wEiのスタイルにしてもそういった面白そうなことを何でもやってみるというエビストの挑戦的な気質から生まれてきたものですし、最初期の何がしたいのかよくわからない状態からどんどんと面白くなるための様々な試みを繰り返して自己進化を続けてきたのがこのコンテンツでした。
 なので今回それがようやく完成した何かに達することが出来ましたという形を出すよりも、まだまだ色々なこと何でもやれるようにしていくよという形を見せてくれたことは、個人的には今が完成形であるという強さよりも未来でまだまだ先に行けるというポテンシャルを示してくれていたようで非常に安心するところがありました。
 それに、ある意味では節操がないとも言えるそんなスタイルですが、しかしそこに同じく信念もないというわけではありません。
 その根底には先に挙げたようにまず何よりも『楽しんで欲しい』という想いがあるからこそ、何となく大丈夫だという気がするのです。
 イベントを、ライブを、ステージを見に来る人達に楽しんで欲しい。ゲームをプレイしてくれる人達に、物語を読んでくれる人達に、コンテンツを追いかけてきてくれる人達に、楽しんで欲しい。
 そういう想いがあって、そのために今後もやれることを何でも、精一杯やっていくんだという決意を、何となくですが自分はこのイベントを通じて感じることが、信じることが出来たように思います。買い被りすぎかもしれませんが。
 まあ、いずれにせよ"そういう想い"を届けたいというのを節々から感じられるイベントであったことは間違いないと思います。
 それはリーディングのシナリオやライブMCから直接的にであったり、あるいはここまでそれぞれのパートから感じたことをまとめてみた内容のように間接的にであったりと様々な形ではありますが、確かに存在していたと思います。
 そして何より、そういう想いをこうやってしっかりと形にして届けられるようになったということには、三年間頑張って積み上げてきた強さと、四年目からもその強さで歩いて行ける希望を感じられました。
 それと同時に、まあ本当に色々なことがあってしまった一年でしたが、それでもまだ大丈夫なんだ、背負ったものと一緒に変わらずに前を向くんだというのを立派に示してくれたようにも思えて、満足ですね……本当に満足でしたし、救われた気分になりましたよ。
 勿論、この先もう辛いことはないというような保証は全くありません。
 エビストの人気も、というか人気だけが本当に三年経ってもまだまだ全然盤石とも言えません。
 いずれまた試される時は幾度となく訪れるでしょうし、いつになるかはわかりませんが終わりを迎える時も来るでしょう。
 その終わりを迎える場所が、果たしてどういう風景なのかも今はまだ、まるでわからないと言ってもいいでしょう。
 しかし、少なくともそこに後悔というものはもうないのではないかなと、今回のイベントに参加し終えた後の自分は思うことが出来ています。
 まあ時が戻せるならば戻したいくらいの後悔を既に経験してしまったというのもあるかもしれませんが、そうでなくともこのコンテンツはいつだって全力で、みんなが楽しめる、ワクワクすることのために何かをしてきたし、これからもやっていくんだというのが今回明確になったことは大きな安心を生んでくれました。
 そして、そうやってコンテンツも、自分達も、一緒にワクワクすることをずっと追いかけていけたならば、どこが終わりの場所であったとしても、後悔することなく最後まで楽しめるのではないかと思うし、そう信じたくなってしまうのです。綺麗事ですし、理想論ですけど。
 だから、なんでしょうね、正直言うとこれまではずっと心の片隅に不安が常にありました。
 エビストは、ハニプラは本当にやれるのか? 人気は出るのか、出ないのか? いつ終わるのか、終わらないのか? そして自分は追いかけた結果に後悔するのか、しないのか?
 そんなことを考えてはライブやイベントの度に精神を不安定にしたり、布教のための怪文書を自分でもどうかしてんじゃないかと思うくらいの長さでしたためて結果何の役にも立ってなかったりということを繰り返してきたわけですが。三周年イベントの直前までそれも例外ではなかったわけですが。
 しかし今回のイベントに参加し終わってからは、ふっと、自分でも信じられないくらいにそういう類いの不安が雲散霧消してしまっていました。
 まあ、正直ちょっとばかりは悲しみというものに慣れてしまったところもあるかもしれませんが、それでも何か今はまあ妙なくらいに晴れやかですね。
 次の5thライブめっちゃ普通に、純粋に楽しみですし。どんなものを見せてくれるにせよ、楽しくてワクワクするだろうことはきっと間違いないはずですし。
 そして、それは別に人気が出て欲しいとか、規模が大きくなって欲しい、売れて欲しいとかいう向上心が完全に消滅してしまったというわけでもありません。
 今だって喉から手が出そうなくらいには人気と安定した地位と売り上げは獲得して欲しいと思い続けています。
 けれどまあ、結局本当の目的はそういうことじゃないし、人気も規模もその時に合わせた、その時にしか出来ないことを全力でやってくれるんだということに、三年付き合ってきてようやく気づくことが出来たし、今はそういうことをちゃんと信じられる姿になってくれたからこそ、そんな思いに囚われすぎないようになったんじゃないかなと思います。
 なので、こういうお気持ち文書をしたためる時に毎回必ず末尾に据えていた「8 beat Story♪ want you!(エビストは君を求めている)」という布教文言も今回は書いておくつもりはありません。
 何故かって、まあ……来るでしょ、みんな。その内、ほっといても。これだけ面白くて、ワクワク出来るコンテンツになったのだったら。
 同じドキドキを感じて、心が一つになる。そういう楽しさを知っているなら、求めているなら、まあ誰かに言われなくても辿り着くんじゃないでしょうか。
 だって今一番そういうものがここにある二次元アイドルコンテンツは、間違いなくこの8 beat Story♪なんですから。

 


 ……何でこう結びの文章書いてると気づかない内にこんな風にクソポエミーな文章になっちゃうかな!
 まあ今も昔もこれから先もまだまだエビストは楽しいねって、結局そういうことが言いたかっただけですよ。
 そして、これからもそういうことを忘れずに進んでいけるコンテンツであることを願っておりますよ、と。
 三周年、本当におめでとうございました。

 

*1:全部書き終わってみたら本当にアホかと思う程長くなっていたので自分でドン引きしつつ心から申し訳なく思っております……

*2:詳しく知りたい人は本ブログの前回の記事を読んでね(クソ長いけど)http://m-kichi.hatenablog.com/entry/2018/06/03/222600